基礎編 機器編 実践編

航空管制の交信例(その2-上昇~着陸まで)

 基礎編でも触れていますが、航空管制の交信には原則「英語」が使われています。また多種多様な専門用語も多く使われます。

このため、初めて航空管制の交信を聞く方にとって、交信内容を理解するのは難易度の高いことになります。

 

 そこで、このページでは実際に航空管制ではどのような交信が行われているのか、日本語訳を交えてシミュレーションをしてみます。

これを参考にしていただければ、実際の交信を聞いた時に、その内容を早く聞き取って理解してもらえるようになるのではないかと思います。

 

【※ご注意】
 ここで公開している交信内容は完全な「フィクション」であり、実際の交信を文章化したものではありません。実在の航空会社名やコールサイン等を使用していますが、実際に行われた交信とは全く関係ありません。

 

 実際に行われた交信内容をインターネット等で交換することは、電波法などの法令に違反・抵触する行為となることがあります。
当サイトではそのような行為について奨励はしておりませんので、ご注意ください。

 

 また、そのような行為で不利益を被った場合でも、当サイトでは一切の責任を負いません。

 

【場面設定(2)】

 東京国際空港(羽田空港)を離陸した大分空港行のANA791便は、航空路へ向けて上昇していきます。この先巡航高度を飛行して、大分空港へと向かっていきます。

 

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 ※表中の赤文字が航空機側青文字が管制官側の送信内容を示しています。

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【SCENE-4】上昇~巡航(航空路へ(Tokyo Departure)

羽田空港を離陸した大分行ANA700便が、出発管制にコンタクトします。

交 信 内 容( 日 本 語 訳 ) 解 説・備 考
Tokyo Departure,ALL NIPPON 700. Leaving 1500,Clibming to flight level 180 .

(東京ディパーチャー、こちらはANA700便です。現在高度1500フィートを通過、高度18000フィートへ向けて上昇中です。)
離陸後最初に交信するのがディパーチャーです。 現在の高度と、上昇目標の高度を告げます。
ALL NIPPON 700,Tokyo Departure,Rader contact. turn right heading 150,clibming flight level 210 .

(ANA700便、こちらは東京ディパーチャーです。レーダーで捕捉しました。方位150°へ右旋回、FL210まで上昇してください。)
ディパーチャーがレーダーでANA700便を捕捉 しました。航空路への誘導が始まります。 「 turn right 」は 右旋回 の指示です。 左旋回 の 場合は当然「 turn left 」となります。 旋回方向を指定しない場合は「 turn heading 」 と指示し、どちらに旋回するかは航空機の判断に よります。 「 clibming(クライミング) 」は 上昇中 を示しま す。 降下中 の 場合は「 Desending(ディセンディ ング) 」と表現します。
   
ALL NIPPON 700,Resume own Navigation direct "NINOX", And clibming maintain FL380 .

(ANA700便、"NINOX"ポイントへの直行を許可、その後は承認されたルートを飛行し、FL380まで上昇・維持してください。)
航空路の混雑が無い場合などでは、途中経路を ショートカットする指示が管制官から出ます。 " NINOX "は航空路にいくつも設定されている 途中の ポイント名 です。 航空機のコンピュータにはこれらのポイント名が データベースとして記憶されており、これを設定 するだけでそのポイントへ自動で飛行できます。 効率よく目的地へ飛行出来るように考慮する 事で、環境への負担軽減が図れます。 「 Maintain 」は「 維持せよ 」という指示です。
Clear direct "NINOX", and clibming maintain FL380,ALL NIPPON 700 .

( ANA700便、"NINOX"へ直行、FL380へ上昇し維持します。)
 
ANA700便は所定の航空路に近づいて 来ました。管制が航空路管制に変わります。  
ALL NIPPON 700,Contact Tokyo Control 132.1 .

(ANA700便、132.100MHzで東京コントロールと交信してください。)
管制が航空路管制に引継がれました。
Contact Tokyo Control132.1. ALL NIPPON 700.Good day!

(132.100MHzで東京コントロールと交信します。良い一日を!)
 
【SCENE-5】巡航~降下(Tokyo Control → Kobe Control)

ANA700便は予定の航空路・高度へ到達し、巡行に入ります。

この先は航空路管制を引継がれながら、大分空港へと向かいます。

交 信 内 容( 日 本 語 訳 ) 解 説・備 考
Tokyo control,ALL NIPPON 700. Request Descend FL350 due to turbulence.

(東京コントロール、ANA700便です。乱気流がありますので、FL350への降下をリクエストします。)
巡行中に何らかの事情で 上昇・降下 や 進路の 変更 などを要求する事があります。 この例では「 Due to turbulence 」=「 乱気流 が あるため」という事で、FL350へのDescend (降下)を要求しています。
ALL NIPPON 700,Descend and maintain FL350 .

(ANA700便、FL350へ降下・維持してください。)
 
Descend and maintain FL350. ALL NIPPON 700 Thank you .

(FL350へ降下・維持します。ありがとう)
降下のリクエストは無事に許可されました。
ALL NIPPON 700,contact Kobe control 132.5.

(ANA700便、132.500MHzで神戸コントロールと交信してください。)
管制エリアが神戸コントロールになります。 周波数変更の指示が出ます。
Contact Kobe control 132.5, ALL NIPPON 700.

(132.500MHzで神戸コントロールと交信します。)
 
ANA700便は神戸コントロールの管制エリアに移管され、大分空港へ近づいてきました。まもなく降下の指示が出るころです。  
Kobe control,ALL NIPPON 700 Maintain Fl350.

(神戸コントロール、ANA700便です。FL350を飛行中です。)
神戸コントロールにコンタクト、FL350を飛行中 であることを告げます。
ALL NIPPON 700,Kobe contorol roger.

(ANA700便、神戸コントロールです。了解しました。)
 
ALL NIPPON 700,Descend and maintain FL180.

(ANA700便、FL180へ降下・維持してください。)
いよいよ空港への進入タイミングが近づいて きました。管制より降下の指示が出ます。
Descend and maintain FL180, ALL NIPPON 700.

(FL180へ降下・維持します。)
 
ALL NIPPON 700,Descend 11000 and Direct "YANAI".

(ANA700、11000フィートまで降下、"YANAI"ポイントへ直行してください。)
さらなる降下と、"YANAI"ポイントへの直行 指示が出ました。 まもなく大分空港の管制へと引き継がれます
Roger Descend 11000,Direct "YANAI" ALL NIPPON 700.

(了解しました。11000フィートへ降下、"YANAI"へ直行します。)
 
ALL NIPPON 700,Contact Oita Rader 120.6.

(ANA700便、120.600MHzで大分レーダーと交信してください。)
ANA700便は大分空港の進入管制エリアに 入りました。管制がレーダーに引継がれます。 進入管制は、「 アプローチ 」、「 レーダー 」、 「 タワー 」などが行います。空港の規模等に よって異なります。 最終進入までのレーダー誘導 が主な役割です。
Contact Oita Rader 120.6. ALL NIPPON 700,Good day!

(120.600MHzで大分レーダーと交信します。良い一日を!)
 
【SCENE-6】進入~着陸(Oita Rader → Oita Tower → Oita Ground)

ANA700便は大分空港への着陸へ向け降下・進入を続けます。

交 信 内 容( 日 本 語 訳 ) 解 説・備 考
Oita Rader,ALL NIPPON 700, Descend 11000,Direct "YANAI"

(大分レーダー、ANA700便です。11000フィートへ降下、"YANAI"へ直行中です。)
ANA700便が大分レーダーにコンタクトしました。現在の 飛行状況を告げます。
ALL NIPPON 700,Oita Rader roger. Continue Approach,Reduce Speed to 210 knot, QNH 2994.

(ANA700便、大分レーダーです、了解しました。
進入を継続してください。速度210ノットに減速してください。
QNHは2994です。)
進入継続の指示です。 「Reduce(リデュース)」は減速の指示です。 増速の場合は 「Increase(インクリーズ)」を 使います。 「QNH(キューエヌエイチ)」は高度計の補正値を 示します。 航空機は気圧を計測し、高度に換算しています。 なので、空港や地域ごとに異なる気圧の補正が 必要です。管制はその地域の補正値を伝えます。
Roger,Continue Approach.QNH 2994. ALL NIPPON 700 .

(了解しました。進入を続けます。気圧補正値は2994。)
 
ANA700便はさらに高度を下げ、まもなく 最終進入に入ります。  
ALL NIPPON 700,Cleared for RNAV Runway 01 approach Contact Oita Tower,118.8.

(ANA700便、RNAV方式で滑走路01への進入を許可します。118.800MHzで大分タワーと交信してください。)
「RNAV Runway 01 Approach」は、空港毎に 定められた着陸進入の方式です。 「RNAV」は「aRea NAVigation」を略したもの で、「アールナブ」と読みます。 GPSが発達し一般化した、現代の航法で使われる ようになった方式です。 この他に、「ILSアプローチ」、「VOR/DME アプローチ」や、天候が良いときには「ビジュアル アプローチ(パイロットが目視で飛行する)もよく 使用されます。
Cleared for RNAV Runway 01 approach, Contact Oita Tower,118.8 ALL NIPPON 700.

(RNAV方式で滑走路01への進入を許可、118.800MHzで大分タワーと交信します。)
 
ANA700便は最終着陸態勢に入りました 。 大分タワーにコンタクトします。  
Oita Tower,ALL NIPPON 700,Now 5 miles North East of "Tanso". RNAV Runway 01 Approach.

(大分タワー、ANA700便です。現在"Tanso"ポイントの北東5マイルです。 RNAV方式で滑走路01へ進入中。)
最終進入から着陸までを管制する「タワー」への ファーストコンタクトです。 現在の飛行位置と、進入状況を告げます。
ALL NIPPON 700,Oita Tower Roger. Continue Approach,Wind 350 at 4. QNH 2993.

(ANA700便、大分タワー、了解しました。進入を継続してください。
現在の風は350°から 4ノット、高度計の気圧補正値は2993です。)
 
Roger,continue Approach,QNH 2993. ALL NIPPON 700.

(了解しました、進入を続けます。高度計気圧補正は2993。)
 
まもなく着陸です。 大分タワーから着陸許可が出ます。  
ALL NIPPON 700,Runway 01 Cleared to land. Wind 350 at 5.

(ANA700便、滑走路01への着陸を許可します。風は350°から5ノットです。)
着陸を許可する「Cleared to land」の指示が 出ました。
Runway 01 Cleared to land. ALL NIPPON 700 .

(滑走路01へ着陸します。)
 
ANA700便は滑走路を出て駐機場へ 向かいます。 着陸した航空機は、最も早く離脱可能な誘導路 から滑走路を離れます。 状況により、管制より離脱する誘導路を指定される 事もあります。
Oita Ground,ALL NIPPON 700. On "T-5" to Spot.

(大分グランド、ANA700便です。現在地"T-5"よりスポットへ向かいます。)
 
ALL NIPPON 700,Oita Ground,roger. Taxi to Spot 10.

(ANA700便、大分グランドです。了解しました。スポット10までの地上滑走を許可します。)
 
Taxi to Spot 10,ALL NIPPON 700.

(スポット10へ地上滑走します。)
 

 ANA700便は大分空港の10番スポットへ到着しました。

 

 いかがでしたでしょうか? 航空機の出発から到着までの航空管制の交信をシミュレーションしてみました。
今後、初めて航空管制を聞いてみる時に、参考になればと思います。

 

 なお、ご自宅の近くに空港が無いワイドバンドレシーバーを持ってないので聞くことが出来ない・・・という方のために、インターネットで航空管制を聞くことが出来るサイト「LiveATC」をご紹介します。。


Live ATC.net

 【URL】・・・https://www.liveatc.net/ 

       (上のURLまたは下の画像をクリックすると、サイトにリンクしています)

 「LiveATC」の使い方など、詳細は【インターネットで聞ける航空管制「LiveTAC」】のページで解説しています。